要点
- 獣医として現場をやってきて、お金の話まではついていけました。でも、経営論、特に組織論となると話が違うと感じています
- ある偉い先生から 「外科医に経営なんかできないでしょ?」 と言われたことがありました。その意味が、最近、ようやく少し分かってきた気がします
- 病院の現場は 「木を見る」 仕事。MBAで議論される組織論は 「森を見る」 仕事。両方を行き来する感覚がいります
- 文系の世界には、答えがありません。それでも私は、答えのない組織論をやりたいと思っています
1. 獣医とお金の話までは、ついていけた
獣医業を長くやってきて、ある時こう気づきました。
お金の話までは、まだついていける。
財務、収支、設備投資、給与設計。こういう話は、現場で動物を診ているのと地続きの感覚で考えられます。数字には答えがあるからです。
ところが、経営論、特に 組織論 になると、急に景色が変わります。
2. 「外科医に経営なんかできないでしょ?」
少し前に、ある偉い先生から、こう言われたことがありました。
「外科医に経営なんかできないでしょ?」
当時の私は、正直、ピンと来なかったんです。「別にできるんじゃないか」と思っていました。外科医として手術をこなしながら、財務も人事も自分でやってきていたつもりだったので。
ところが最近になって、その言葉の意味が、ようやく少し分かってきた気がしています。
外科医ができないと言われたのは、手術ができないから経営ができない という話ではありません。そういう単純な意味ではないのです。
3. 現場は「木を見る」、組織論は「森を見る」
私が今、自分なりに持っている整理はこうです。
病院の現場は、「木を見る」仕事。
一頭一頭の動物の症状を診る。一人ひとりのスタッフの様子を見る。一日一日の判断を積み上げる。視点はミクロで、細部に集中する。
組織論は、「森を見る」仕事。
組織全体の構造、文化、流れ。何年もかけて変わっていく方向性。視点はマクロで、抽象度が高い。
外科医として現場に立ち続けている人間は、木を見る筋肉が強い。それは武器でもあります。ただ、その筋肉だけでは、森の話に切り替わった時に、急に景色が変わって戸惑うことになります。
MBAでこういう話をしていると、急に森の方を求められる。今、私は森の方の仕事をしようとしているところで、現場の細かな話に引き戻されると、その都度、頭を切り替えなければなりません。
「外科医に経営なんかできない」と言われたのは、この行き来の難しさ を指していたのかもしれない。今はそう感じています。
4. 文系の世界には、答えがない
組織論をやっていてつくづく思うのが、「文系の人って答えがないな」 ということです。
これは別に文系をバカにしているのではありません。むしろ、答えのなさと付き合い続ける文系の世界に、私は今、ぐいぐい引き込まれています。
医療には答えがあります。手術の手順にも、診断のフローにも、薬の用量にも、ある程度の正解があります。だからこそ、私たちはそれを学んで、現場で再現します。
ところが組織論には、答えがない。
「ティール組織が正解です」と言われても、Googleですら何十年もかけて、まだ答えが見つかっていないと言われています。「自走する組織」と言っても、その作り方は誰も教えてくれない。
それでも私は、組織論をやりたい。
答えのない領域で、自分で考えて、自分で形を作っていく。これは外科医として現場に立つこととは、まったく違う筋肉の使い方です。
5. それでも、組織論をやりたい
「外科医に経営なんかできない」と言われたあの言葉は、今、自分の中で別の意味を持ち始めています。
「できない」ではなく、「できるようになるには、まったく違う筋肉が要る」。
その筋肉を、私はこれから育てていきます。
木を見る仕事と森を見る仕事を行き来しながら、答えのない領域に少しずつ自分の形を作っていく。
これが、これから10年、私がやりたいことなのだと思っています。
まとめ
- 獣医として、お金の話まではついていけました。組織論となると、別の筋肉が必要です
- ある偉い先生に 「外科医に経営なんかできないでしょ?」 と言われ、その意味が最近やっと分かってきました
- 現場は 「木を見る」 仕事、組織論は 「森を見る」 仕事。両者を行き来する感覚がいります
- 文系の世界には答えがありません。それでも私は、答えのない組織論をやりたいと思っています
FAQ
Q. 院長業をしながら森を見る時間を取るのは、現実的に可能ですか?
A. 簡単ではないと思っています。現場から声がかかる回数が圧倒的に多いからです。だからこそ、意図的に時間を確保する こと自体を、経営判断として組み込む必要があると感じています。
Q. MBAは動物病院経営に必要ですか?
A. 必須ではないと思います。ただ、森の話を学ぶ場として は、私個人にとって意味がありました。
Q. 文系の答えのなさに付き合うコツはありますか?
A. コツというより、考え続けること に尽きると感じています。答えが出ないことに耐えながら、それでも考えることを止めない。それしかないように思います。
