要点
- 動物病院経営は パーパス → プロダクト → データ → 利益 → 組織 の5層で動いています
- 多くの病院は MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を掲げて止まります。しかし、現場が本当に動かないのは「組織」の層です
- スタッフ5〜10名の頃は機材・利益で回りますが、15人になった時に初めて組織論にぶつかります
- だから「ティール組織です」と語っても伝わりません。手前の4つを通過した人にしか刺さらないからです
- このブログは、その手前の4つを通過した経営者に向けて、動物病院の現場で起きた一次情報を残す場所です
1. なぜ「組織論」がいつも最後に出てくるのか
私はずっと、勉強会で経営学・行動経済学・幸福学・アドラー心理学を読み続けてきました。「辞める人、ぶら下がる人、潰れる人、さてどうする」のような本もずっと読んできました。
その積み重ねの最後にたどり着いたのが ティール組織 だったのですが、最近気づいたことがあります。
組織論というのは、人にとって「すごく大きなもの」に感じているようです。
最近、沖縄の動物病院にコンサルに入っているのですが、そこの院長と話していても「まず行動経済学から教えてもらうといいかな」という話になります。組織論を一気にやろうとするのではなく、手前の話から積み上げないと届かないのです。
そこで、自院の経営フレームを整理し直しました。
2. 動物病院経営の5つのドライブ
私は、動物病院経営は次の5つのドライブで動いていると考えています。
- パーパス — 組織の根底にある目的
- プロダクト — パーパスを具現化する製品・サービス(医療体制)
- データ — 何を測り、何で判断するか
- 利益 — 持続のための条件
- 組織 — 成長を促進するための構造
順序が大事です。上から下の順に積み上がっていきます。
3. 各層の中身
3-1. パーパス — もうみんなやっている
パーパスは「存在意義」「うちの病院は何のためにあるのか」です。
うちで言えば 「動物・人の生活を豊かにする」。
ただ、正直に言って パーパスはもうみんなやっています。掲げるだけならそんなに難しくありません。
3-2. プロダクト — パーパスを具現化する医療
うちは 高度医療・専門性強化・症例の蓄積 をプロダクトとしています。
「パーパスのために何を作っているか」が明確であること。飼い主さんから見て「ここでしか受けられない医療」を持っていること。
3-3. データ — 管理ではなく判断のために
うちは 11週ごとの売上、医療機器の稼働率、再診率 をスタッフ全員に開示しています。
ただし、これは「管理」ではなく 「判断のため」 です。数字を見せて追い詰めるためではなく、みんなが自分で判断する材料として渡しています。
3-4. 利益 — 目的ではなく持続の条件
利益は 目的ではありません。しかし、キャッシュなしでは継続できません。
「利益は持続の上限として出るようにしていく」というのが私のスタンスです。ですから、うちでは利益も結構意識させています。
4. そして、最後に「組織」が来る
ここまでの4つは、経営者が頭で考えれば形になる部分です。
パーパスを掲げ、プロダクトを磨き、データを開示し、利益を意識する。
しかし、「組織」だけは経営者一人では動かせません。
一番下の層なのに、一番動かしにくいのです。
スタッフが5人や10人の頃は、機材・医療技術・利益を追いかけていれば組織は回ります。院長の目が全員に届く範囲だからです。
ところが、15人になった時に初めて、組織論にぶつかります。
「私正社員だから」「私パートだから」のような話が出てきたり、ティール組織って何?というところでみんなが戸惑い始めたりします。
ここで初めて、経営者は 「組織論」という言葉を必要とし始めるのだと思います。
5. なぜ「ティール組織です」が伝わらないのか
私自身、ずっと「ティール組織でいいよ」とスタッフに言ってきました。
しかし、ある時気づきました。みんな「なんかいいのはわかるけど、なんでそうなの?」という顔をしているのです。
説明を抜きに、結論だけ提示していました。
その結論にたどり着くまでに、私は アドラー心理学・幸福学・行動経済学 を読み込んできていて、パーパスを掲げ、プロダクトを磨き、データを開示し、利益を意識してきた経験があります。
その背景なしに「ティール組織で行きます」と言われても、スタッフからしたら「は?」となります。
これが、組織論を語る時の落とし穴です。
6. このブログで書いていくこと
このブログは 「動物病院の組織論」を、結論からではなく、5つのドライブの積み上げから書いていく場所 にします。
これから順番に取り上げていきたいのは、たとえばこんなテーマです。
- パーパス論 — うちの場合、それがどこで意味を持っているか
- プロダクト論 — 動物病院における「製品」とは何か
- データ論 — 売上を開示しても「管理」にならないのはなぜか
- 利益論 — 利益を「目的」と捉える組織との違い
- 組織論 — レッド・アンバー・オレンジ・グリーン・ティールの5段階を、現場でどう使い分けるか
そして、これらすべてを 動物病院の現場で実際に起きた事例ベース で書いていきます。
「パーパスとは何か」のような話は Wikipedia に書いてありますので、わざわざ私が発信する意味はありません。
私が書く価値があるのは、「うちの病院ではこういうケースがあって、こう判断した」 という一次情報だけです。
7. ティールベットラボ — 同じ景色を見たい人へ
このブログには、もう一つの目的があります。
「ティールベットラボ」 という勉強会を立ち上げています。
これは、動物病院業界で 組織論の壁にぶつかった経営者 が集まって、一緒に考える場所です。
獣医療界の病院の考え方そのものを変えていかないと、求人なども外の周りのエージェントにやられてしまいます。そういう危機感を共有できる仲間を、業界の中で増やしていきたいと考えています。
このブログは、そのラボの 入り口 にもなっていきます。
まとめ
- 動物病院経営は パーパス → プロダクト → データ → 利益 → 組織 の5層で動きます
- ほとんどの病院は MVV を掲げて止まりますが、本当の壁は 組織の層です
- スタッフ15人になった時、組織論が必要になります
- 結論(ティール組織)から入ると伝わりません。5つのドライブを順に積み上げます
- このブログはその5層を 動物病院の現場の一次情報 として書いていく場所です
- 「組織論の壁にぶつかった経営者」が集まる場所として、ティールベットラボ を運営しています
FAQ
Q. 組織論を学ぶ前に、何を学ぶべきですか?
A. 私の経験では、まず 行動経済学・アドラー心理学・幸福学 から入ると、組織論の前提が腹落ちしやすいと感じています。組織論をいきなり学ぶと、現場で使いにくいです。
Q. スタッフ何人くらいから組織論が必要になりますか?
A. 私の感覚では 15人 が一つの分岐点です。それまでは院長の目で全員が見える範囲ですが、15人になると違う運営方法が必要になります。
