要点

  • ソース原理 は、ティール組織を紹介したフレデリック・ラルーが「事前に知っていたら本で紹介した」と言った概念です
  • 提唱者は ピーター・カーニック(30年以上研究)、それを本にしたのが トム・ニクソン です
  • ソース原理とは、何かを率先して始めようとした人(ソース)のところにパワーが集まる という現象論
  • ティール組織の すべての段階に、ソースとなる人がいる
  • うちの副院長が腎臓の外科的処置を自ら企画・推進している。これがソース。私はそれを支える サブソース です
  • 「やりたい」という興味と、責任を持って企画する ソースは違う。まだ私も勉強中のテーマです

1. ラルーが「知っていたら紹介したかった」概念

最近勉強している「ソース原理」の話をします。まだ勉強中なのですが、面白い発見だったので紹介させてください。

これは、ティール組織を紹介したフレデリック・ラルーが言っていることで、「もし自分が事前に知っていたら、ティール組織の本で紹介した」という内容なんです。それくらい、ティール組織を実践するうえで大事な原理だということですね。

提唱者は、ピーター・カーニックという人で、30年以上これを研究しているそうです。その研究をもとに本を書いたのが、トム・ニクソンという人。『ソース原理』という本を探してもなかなか見つからなくて、私の手元にはこの一冊があるだけなのですが、内容もいろいろな話をしていて、正直すごく分かりにくい。それでも、言いたいことの核はつかめてきました。


2. ソース原理とは何か

一言でいうと、何かを率先してやり始めようとした人のところに、パワーが集まる。そういう現象を説明した原理です。始めた人のことを「ソース」と呼びます。

ティール組織では、自律性・目的の共有・関係性という3つが大事だと、私は何度も言ってきました。自分たちで経営し、目的を共有し、その関係性の中で仕事を進めていく。ただ、その中で「じゃあリーダーはいないのか」という疑問が出てきます。

自律的に何かを始めると、そこにサークル(集まり)ができて、いろいろな権限や役割が与えられていく。その中に「リード」という役目があって、それがソースになる場合もある。そして、ティール組織のすべての段階に、このソースとなる人がいるというのが、この原理の面白いところです。

たとえば、東千葉動物医療センターという動物病院を私が立ち上げようとしているわけですから、その意味では院長である私自身がソースになる。そこにいろいろ助けてくれる人が加わって、進めていく。その人たちを「サブソース」と呼びます。


3. レッド組織と、何が違うのか

ここで、レッド組織との違いを考えてみました。

ソースが一人、二人、三人で進めている段階は、見た目にはレッド組織と似ています。ただ、レッド組織というのは、もっと大きな組織——50人、100人といった規模で、一人が恐れと恐怖で支配している状態のことです。

面白いのは、恐怖で支配しているように見える人も、実はその人がソースだったりする、ということ。ソースは、始めたことに対して責任を負う。そこが決定的に違います。ただ支配しているのではなく、自分が始めたから最後まで責任を持つ。だからパワーが集まるんです。


4. 具体例 — 副院長の「腎臓」

具体的な例をひとつ。

うちの副院長は、もともと腹腔鏡をやっていました。そこからさらに、違う術式をやりたいと言い始めた。今、彼女が一生懸命やっているのが、腎臓です。腎臓疾患の子を助けたいという思いから、腎臓のいろいろな外科的な処置を始めようとしています。

これは、ただ「やりたい」という気持ちだけではありません。そのために自分で投資もする。私に「こうやって技術を習得したいので、この研修に参加したい」と説明してくる。必要な高価な処置の道具もそろえていく。自分で責任を持ってやろうとしているんです。これがソースだと思います。

対比で言うと、たとえば1年目の子が「画像診断をやりたいから勉強しに行きたい」と言う。これは、ただの興味です。悪いことではないけれど、企画して、責任を持ってやりたいという気持ちがないと、そこには出てこない。その差が、ソースかどうかの分かれ目なのかなと思っています。

そして、副院長がソースとして進めることに対して、私が助手に入る。そのとき私はサブソースになります。サブというのは補欠という意味ではなくて、その人をどんどん助けて巻き込んでいく役割のことです。


5. 院長は、たくさんのソースになれる

院長という立場は、いろいろなことの責任を最後まで持てるので、たくさんのソースになっていると思います。

たとえば、あとで詳しく書きますが、タクティカルミーティングで挙げる「テンション(違和感・課題・アイデア)」も、私は結構自分から出します。違和感を一番感じられるのは院長だからです。院長がどんどんテンションを出し、スタッフも自由に出していく。

意見を言うということは、それに対してある程度の責任を負うことでもある。そこを乗り越えないと、最初の一歩は出せません。その責任まで負いながら、実際に一歩を踏み出せる。それがソース原理です。 一人が3つのソースになることもあれば、あるときはサブソースになることもある。それがどんどん増えていくことが、自律性につながっていくのだと思います。

自律性とか、有能感とか、成人発達論とか、これまで組織論でいろいろ学んできました。ソース原理は、そこに「では実際に、どうやって行動を起こすのか」という一歩を説明してくれる。ティール組織にこれが加わると、すごく馴染んでくる感覚があります。まだ勉強中ですが、今後の議論に役立ちそうだと感じています。


まとめ

  • ソース原理 は、ラルーが「知っていたら紹介したかった」と言うほど、ティール組織と相性の良い概念
  • 提唱は ピーター・カーニック、本にしたのは トム・ニクソン
  • ソースとは、率先して始め、責任を負う人。そこにパワーが集まる
  • レッド組織の「支配」と違い、ソースは自分が始めたことの 責任 を持つ
  • うちの例では、腎臓の外科処置を企画する副院長がソース、支える私がサブソース
  • 「やりたい」という興味と、責任を持つソースは違う。一人が複数のソース/サブソースになれる

FAQ

Q. ソースと、ただ指示を出す人は何が違うのですか?
A. 責任の負い方だと思います。指示を出すだけの人は、始めたことの結果までは引き受けません。ソースは、自分が率先して始めたことに対して、投資も、説明も、最後の責任も引き受ける。だから周りが自然と力を貸したくなる。そこが違うと考えています。

Q. スタッフをソースにするには、どうすればいいですか?
A. 「やりたい」という興味を、「企画して責任を持ってやる」ところまで引き上げる支援だと思います。うちの副院長のように、研修や道具の相談を受けたら、それを止めずにサブソースとして巻き込んでいく。院長がサブソースに回れるかどうかが、けっこう鍵だと感じています。

Q. これはティール組織でなくても使えますか?
A. 使えると思います。ソース原理は、どの段階の組織にもソースがいる、という捉え方です。ただ、自律性・目的の共有・関係性がそろっている組織のほうが、ソースが動きやすい。だからティール組織と相性が良いのだと、私は理解しています。


澤村 昌樹 — 沢村獣医科病院 院長