要点

  • ティール組織で一番なくしたいのは、根回し です。陰の話し合いや偏った情報伝達は、組織を確実に悪くします
  • 人は、自分の預かり知らぬところで物事が決まること に、強い不安と不満を持ちます
  • だから、すべてを 公式のテンション として、みんなの見える場で話し合う
  • 経営者がこのOSを意識しないと、悪意なく「病院を良くしたい」人が根回しを始めてしまう
  • それは結局、正論と正論のぶつかり合い になり、組織を悪くする
  • 自律性・目的の共有・関係性(全体性) の3つがそろって、初めて正論の衝突を越えられます

1. 根回しほど、最悪なものはない

ティール組織を運営するうえで、私が一番なくしたいと思っているもの。それは「根回し」です。

「私はこう思っているから、こうだよね」と陰で人に伝える。こそこそと話す。あるいは、あとになって「本当はあのとき、こう思っていたんですよ」と言う。こういうものを、うちではなくすようにしています。「本当はあのとき」はもう、なし。「じゃあ、なんでそのとき話し合わなかったの?」という話です。

見える場所にテンションとして書いてあるのだから、そこできちんと話し合ってください。みんなの預かり知らぬところで物事が進まないように。 これが、なかなか根付きにくいけれど、いちばん大事な進め方なんです。


2. なぜ、根回しはそんなに悪いのか

理由はシンプルです。人は、自分の預かり知らぬところで物事が決まることに対して、すごく不安や不満を持つ からです。だいたいの人が、そうだと思います。

以前ブログで、10人くらいの組織の話を書きました。院長室にスルスルと入ってきて「あの人はこうで、ここが問題なんです」と教えてくれるキーマンのような人が、必ずいる、という話です。あれも、結局は根回しなんですね。

私自身、その規模のころは、すごく助かった記憶があります。「この人が、こうやって教えてくれるんだ」と。でも、実際に両者の話を聞いてみると、その人の言っていることが偏っていた、ということが本当に多々ありました。そこまで院長が時間を費やして、その議論に関わるべきだったのか。本来なら、テンションに出して、みんなで解決していったほうがよかったんです。


3. 悪意はない。だからこそ厄介

ここで、経営者が一番気をつけないといけないことがあります。この「テンションで進める」というOSを意識していないと、必ず根回しをする人が出てくる ということです。

しかも、その人に悪意はありません。本気で「病院を良くしよう」と思って、根回しをしている。ここが厄介なところです。「病院を良くしようと思っているんだから、しょうがないよね」となってしまう。

でも、それは結局、正論を言っている人どうしのぶつかり合い になるだけなんです。そして、正論と正論がぶつかると、組織はすごく悪くなります。


4. エアコン事件 — どちらも正論

分かりやすい例が、「エアコン事件」です。

エアコンの温度が、暑い・寒いで議論になる。暑がりの人は「犬もいるし、リハビリなんてしたら暑くてしょうがない」と言う。正論です。治療している人は「そんなに寒くしたら、あたたかく治療してあげたいのに、冷やしたら犬に良くないでしょう」と言う。これも正論です。

両方、正しいことを言っている。 では、「正しいことを言っているんだから、しょうがないよね」で終わるのか。そうではなくて、「じゃあ、どうやって解決しようか」と話してみる過程が、本当はすごく大事なんです。

正しさをぶつけ合う議論に、いつのまにか持っていかれてしまう。それを、解決策を考える議論に引き戻すのが、ティール組織のOSの役割だと思っています。


5. 「全体性」がないと、正論はぶつかる

ここで、ティール組織の3つの要素が効いてきます。自律性・目的の共有・関係性(全体性) です。私は何度でも言います。忘れてほしくないからです。

この3つを、エアコン事件に当てはめてみます。

  • 自律性だけ だと、それぞれが自分の正しさで動くので、正論のぶつかり合いになる
  • 目的の共有がない と、「何のためにこの場にいるのか」が抜け落ちて、ただの正論のぶつけ合いになる
  • 関係性・全体性を意識していない と、やはり正論のぶつかり合いになる

つまり、どれか一つが欠けても、正論の衝突に戻ってしまう。3つがそろって初めて、「正しさ」ではなく「では、どうするか」に進める。組織が潤滑に回り、みんなが楽しく、幸福に働いて、生産性が上がっていく。全体性という視点は、そのために欠かせないものだと考えています。


まとめ

  • ティール組織で一番なくしたいのは 根回し。陰の話し合いは組織を悪くする
  • 人は 預かり知らぬところで決まること に不安と不満を持つ。だから公式のテンションで話す
  • 根回しをする人に悪意はない。「病院を良くしたい」からこそ、正論のぶつかり合いになる
  • エアコン事件 — 暑い・寒いはどちらも正論。「しょうがない」で終わらせず「どう解決するか」を話す
  • 自律性・目的の共有・関係性(全体性) の3つがそろって、正論の衝突を越えられる

FAQ

Q. 根回しをする人に、どう対応すればいいですか?
A. その人を責めることではないと思います。多くの場合、悪意はなく、良かれと思ってやっています。大事なのは、経営者が「うちはテンションで進める」というOSを明確に示し続けること。陰で言われたことは「それ、テンションに出してくれる?」と、見える場所に戻していく。仕組みで受け止めるのが現実的だと感じています。

Q. 「どちらも正論」のとき、院長はどう裁けばいいのですか?
A. どちらが正しいかを裁かないことだと思っています。正しさを競わせると、勝ち負けになってしまう。そうではなく「目的は何だったか」「では、どうすれば両方が成り立つか」に議論を引き戻す。エアコンなら、もう1台入れる、冷風機を置く、といった解決策の話に変える。裁定者ではなく、論点を戻す役目だと考えています。

Q. 全体性(関係性)は、どうやって育てるのですか?
A. 一朝一夕には育たないと思います。ただ、テンションを公式の場で話し合い、根回しをなくしていくこと自体が、全体性を育てる訓練になっている。自分の預かり知らぬところで物事が決まらない、という安心感が積み重なって、少しずつ関係性ができていく。地道ですが、そこに近道はないと感じています。


澤村 昌樹 — 沢村獣医科病院 院長