要点

  • 15年もがいてたどり着いた結論は、「本質は組織の形ではない」 ということでした
  • レッドはヤクザの世界、アンバーはピラミッド型 — そう言われるものは、すべて 「形」 の話です
  • ティール組織には、むしろ 形がない のかもしれません
  • 今いちばん直面しているのは 「全体性」、つまり関係性 です。関係性を崩す人が一人いるだけで、組織は揺らぐ
  • 声の大きい人の意見ばかり聞いていると、経営者は 「裸の王様」 になります
  • だから、経営者が絶対的に成長し続け、日々の意思決定で組織の形をつくっていくしかない

1. 本質は、組織の「形」ではない

15年もがいて、私がたどり着いた結論はシンプルです。

本質は、組織の形ではない。

組織論では、レッドはヤクザの世界、その次のアンバーはピラミッド型、というように分かりやすく説明されます。でも、これは全部「形」の話なんですよね。

そう考えると、逆に、ティール組織には 形がないのかもしれない。アメーバ組織、なんて言われ方もしますが、それもただ「形」を言っているだけです。

大事なのは形ではなく、自律性と、目的の共有。そして、いま私がいちばん直面しているのが、全体性 — つまり関係性 です。


2. 関係性を崩す人が、一人いるだけで

どんなに優秀で、どんなに技術を持っている人でも、関係性を崩す人が一人いるだけで、みんなのモチベーションは下がります。

そして、離職率が上がる。離職率が上がるというのは、結局、生産性を落とすことになります。

だから、ティール組織を目指すときに本当に必要なのは、この関係性をちゃんと理解して、組織の中での言動を一緒にしていける人の集まりなのだと思います。

もちろん、一対一で「なんだか合わないな」というのは、あっていい。それは、人間だからしかたない。私が問題にしているのは、そういう相性の話ではなく、陰でこそこそしたり、根回しをしたり ということのほうです。


3. 「裸の王様」になってはいけない

特に十人くらいの規模だと、よく「キーマン」のような人が出てきます。声が強くて、院長室にとことこ入ってきて、「なんとかだと思うんですよね」と、いろいろ教えてくれる人です。

ここに、落とし穴があります。

その人が教えてくれることは、たいてい すごく偏った情報 です。経営学で言う「ファクト(事実)」と「オピニオン(解釈)」で言えば、それは事実ではなく、その人の解釈にすぎない。なのに、それを真に受けて意思決定をすると、相当ゆがんだ方向に進んでしまう可能性が高い。

経営者がその人の意見ばかり聞く状況になると、その人はだんだん力を持ちます。でも、自分の身を危うくするほどのリスクを取って発言する人は、普通はいません。だから、聞こえてくるのは耳ざわりのいい話ばかりになる。

これは、完全に 「裸の王様」 だなと思うのです。しかも、裸の王様だから、本人には分からない。私自身にもそういう時代があったし、十人、二十人くらいの規模のときは、おそらくほとんどの経営者が裸の王様なんだろうと思います。実際、五十人規模の病院でも、裸の王様の人はいます。


4. だから、経営者が成長し続けるしかない

こうやって考えていくと、結局のところ、経営者が絶対的に成長し続けなければいけない、と強く感じます。

そのときに支えになるのが、「自分が言っている」のではなく、「ティール組織にこう書いてあるんだから、これに沿って判断していこう」という軸です。経営者が、いつもそこを中心にジャッジをする。そうやって毎回伝えていかないと、なかなか理解はしてもらえません。

組織が「形ではない」というのは、そういうことなのだと思います。ホラクラシー憲章という、憲法のようなものもありますが、うちのようにまだ百人以下の規模であれば、憲法を持ち出すより、日々のジャッジで示していくほうが現実的です。

そして、ふだんの意思決定や言葉遣いが、組織の形をつくっていく。原因論でずっと議論していたら、みんな嫌になってしまう。勇気をくじくメッセージではなく、目的論で、勇気づけるメッセージで進めていかなければいけない。経営者の普段の意思決定が、形をつくっていく。 最近、そう思って、私自身も一生懸命、注意しようとしているところです。


5. 結局は、日々のOJTでしかない

「院長は組織の中にいなくちゃいけないのか、上から見ていてはダメなのか」と聞かれることがあります。

上から見ていてもいい、と私は思います。ただ、何かテンションや違和感、可能性のようなものが起きたときに、それをきちんとジャッジして、方向をつけていかなければいけない。

「今日からうちはティール組織でいきます」と宣言して、「はい分かりました、ではティール組織でいきましょう」とはなりません。そんな暇はないし、みんなが本を読む暇もない。結局は、日々のOJT — オンザジョブトレーニング で、仕事をしながら少しずつ伝えていくしかないのです。

ただ、毎回、新しく入ってくる人にこれを一から語るのは大変です。だから、ちょっと文章にしようかなと思っています。 就業規則とまではいかないけれど、「うちはこういうふうに運営していきます」「こういう意思決定をします」というものを書いておく。それを読んで「すごくいいな」と思える人に、入ってきてほしいのです。


まとめ

  • 本質は 組織の形ではない。レッド・アンバー…は全部「形」の話
  • ティール組織には、むしろ 形がない のかもしれない
  • いちばん直面しているのは 全体性=関係性。関係性を崩す人が一人いると組織は揺らぐ
  • 声の大きい人の意見ばかり聞くと、経営者は 「裸の王様」 になる
  • だから 経営者が成長し続け、「ティール組織にこう書いてある」を軸にジャッジする
  • 伝え方は結局 日々のOJT。だから運営方針を 文章にしておきたい

FAQ

Q. 「組織は形ではない」なら、組織図や役職はいらないのですか?
A. いらない、ということではありません。レッドやアンバーといった「形」だけで組織の良し悪しは決まらない、という意味です。形を整えても、自律性・目的の共有・関係性という中身が伴わなければ動かない。私は、形よりも先に、その中身を大事にしたいと考えています。

Q. 「裸の王様」にならないために、何をしていますか?
A. 「誰がそう言ったか」ではなく、それが事実なのか解釈なのかを分けて見るようにしています。よく教えてくれる人の話ほど、偏った解釈が混じっていないかを疑う。そして、自分の判断軸を「自分の好み」ではなく「ティール組織の考え方」に置く。これが、ゆがみを防ぐ歯止めになると思っています。

Q. 運営方針を文章にすると、結局ルールで縛ることになりませんか?
A. 縛るための文章ではなく、「うちはこういう判断をします」という考え方を共有するための文章にしたいと思っています。読んで「いいな」と共感してくれる人に入ってきてほしい。守らせるためというより、同じ方向を向く仲間を見つけるためのものです。


澤村 昌樹 — 沢村獣医科病院 院長