要点
- 満足度(ホワイト企業・労働時間短縮)と幸福度(学びと成長)は、軸が違います
- 10年〜5年前の新卒は満足度を求めていました。今の新卒は「もっと勉強したい」「もっと教えてほしい」と言います
- うちの病院で時間外労働を減らしたら、時間外手当が減って給料が下がる というパラドックスが起きました
- ブラックを撲滅する流れの中で、上の層が気を使いすぎて、満足ではあるけれど幸福ではない組織が生まれている気がします
1. 「もっと勉強したい」と言う若手が増えてきた
最近、新卒の獣医師たちと話していて、明らかな変化を感じます。
「もっと勉強したい」「もっと教えてほしい」
このようなことを口に出す子が、10年〜5年前と比べて明らかに増えました。
当時の新卒は違いました。世の中が「ブラックを撲滅しよう」という流れの中にあって、若手は 満足度、つまり労働時間や働き方の改善を求めていました。これは別に若手が変わったというより、世の中の流れ だったと思います。
2. ブラックがほとんどなくなった時代
10年〜5年前、世の中は 「ブラック企業を撲滅しよう」 という空気に覆われていました。医療業界もこの流れに乗って、労働環境を見直してきました。
結果として、ブラックじゃない職場が世の中にあふれました。
これ自体は良いことです。働く人の権利が守られるようになりました。
しかし、その流れの中で、上の層が「気を使いすぎる」 ようになりました。
そして、ここで気づいたのです。
「満足ではあるけれど、幸福ではない」組織が、すごく増えているのではないか。
3. うちの病院で起きたパラドックス
うちの病院では、ここ数年で 時間外労働をガンガン減らしてきました。
そんなある時、現場から声が上がりました。
「時間外手当が減って、給料が下がりました。」
これは当然の話です。残業代は、残業しないと出ません。時間外労働を減らしたら、その分の手当もなくなります。
ところがスタッフからすると、「給料が減るから時間外労働を減らしたくない」 というパラドックスになります。
満足度(労働時間を短くする)と給料が、同じ軸で動いてしまっているのです。
4. 満足度と幸福度は同じものではない
私はここから、満足度と幸福度を 別のもの として扱うようになりました。
満足度は、就業時間を守る、労働時間を短縮する、ホワイトであること。「不満が少ない状態」です。
幸福度は、学べている、成長している、任されている、仲間と何かを達成している。「プラスが積み上がっている状態」です。
軸が違うものを同じ軸で動かそうとすると、さっきのパラドックスが起きます。
10年前、5年前は新卒が満足度を求めていたので、満足度を上げるだけで採用も定着もうまく回っていました。
しかし今は違います。「ホワイトです、定時で帰れます」だけでは若手の心を掴めない時代に変わってきました。
5. これからの病院に必要なこと
「ホワイトであること」は、もはや 前提条件 です。マイナスをゼロにすること。
その上で、「ここに来ると成長できる」「ここで学べる」「ここで任せてもらえる」 という プラス側の物語 をどう作るか。
これが、これから動物病院経営者が考えるべきことだと思っています。
正直に言うと、私もまだ答えは出ていません。
しかし、満足度と幸福度を 同じ軸で扱わないこと — これだけは確かなことだと感じています。
まとめ
- 満足度(労働時間・待遇)と幸福度(学び・成長)は 軸が違います
- 10年〜5年前の新卒は満足度を求めました。今の新卒は幸福度を求めています
- 時間外労働を減らすと給料が減るパラドックスは、満足度と給料が同じ軸で動いているから起きます
- 上の層が 気を使いすぎる組織 は、満足度は上がっても幸福度が下がります
- これからの動物病院は、ホワイト+成長できる の両立が前提になります
FAQ
Q. ブラックじゃない病院なら、もう採用は大丈夫ですか?
A. いいえ。「ブラックじゃない」は 前提条件 になりました。その上で「学べる・成長できる」という幸福度側の打ち出しがないと、若手は来にくいと感じています。
Q. 給料を上げれば幸福度は上がりますか?
A. 短期的には上がります。しかし、給料は 満足度側 に分類される要素だと私は捉えています。長期的な幸福度は、学びや達成感など別の軸で作る必要があります。
